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ああ、駄目だ。ナメクジが小鈴の周りを這っている。足音が聞こえる。
ちらと見えた。それは小鈴より幼い、子どもくらいの大きさをしたナメクジたちだった。
「いやだ……いやだ……いやだ……いやだ……」
聞こえる。這いずり回る音が……。
「阿求には見えないの?」
そう言って小鈴は指差しました。
……やはり、そこに何かが書かれている様子はありません。ただの、白い紙です。
「ほら、そこに書いてあるじゃない……」
ふらふらと歩き出した。……鈴の音だけを聞いて、歩く。
ちりん、ちりん……。
ちりん、ちりん……。
ちりん、ちりん……。
ちりん、ちりん……。
「あ……!」何かにつまずいて、小鈴は前のめりに倒れた。
――落ちる!
体が下がり、縄が肌にひたりと触れて、皮膚を噛む。
そこで留まった。まだ呼吸はできる。
少しだけ息苦しいまま、私は決心がつくのを待っている。
ボーン……
ボーン……
柱時計が3416322回目の鐘を鳴らす。
時間――だ。
東方鈴奈庵 ホラー小説短編集
(4作品収録)オミシリさん/なめえもん/マヨケの鈴/もののあはれ
5/8 博霊神社例大祭13
新屋四季 つ-24b
新刊『もののけのあはれ』
文庫版294p 1600円
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